皆さんこんにちは。大阪・東京・中四国に拠点を置き全国の空調設備のメンテナンス及び工事を請け負っている英和商工株式会社です。本記事では、クリーンルームのエアフィルターについてまとめました。メンテナンスを怠るリスクや、フィルターの交換頻度などを知り、適切にメンテナンスを行いましょう。
■【クリーンルーム】エアフィルターメンテナンスを怠るリスク
クリーンルームは、精密機器の製造や医薬品製造など、高度な作業を行うために、空気中の塵埃や微生物を厳密に制御された環境です。エアフィルターは、このクリーンな環境を維持するために重要な役割を果たします。
しかし、エアフィルターのメンテナンスを怠ると、以下のようなリスクが生じます。
・空気清浄度の低下
エアフィルターが目詰まりすると、塵埃や微生物がフィルターを通過しやすくなり、クリーンルーム内の空気清浄度が低下します。
・製品品質の低下
精密機器や医薬品は、塵埃や微生物の影響を受けやすいです。空気清浄度が低下すると、製品に塵埃や微生物が付着し、品質が低下する可能性があります。
・設備の故障
塵埃がファンやモーターなどの設備に付着すると、故障の原因になります。設備の故障は、生産停止や修理費用などの損失につながります。
・健康被害
塵埃や微生物の中には、人体に悪影響を与えるものがあります。空気清浄度が低下すると、作業者が塵埃や微生物を吸い込み、健康被害を受ける可能性があります。
・コンプライアンス違反
医薬品製造など、クリーンルームの環境が厳密に規制されている業種では、エアフィルターのメンテナンスに関する規定が定められています。メンテナンスを怠り、規定に違反すると、罰則を受ける可能性があります。
これらのリスクを回避するためには、エアフィルターを定期的に交換し、適切なメンテナンスを行うことが重要です。
■【クリーンルーム】HEPA/ULPAフィルターの交換頻度について
HEPA/ULPAフィルターは、クリーン環境構築において最も重要なフィルターです。クリーンルームの性能を維持するために、HEPA/ULPAフィルターの定期的な交換が必要です。HEPA/ULPAフィルターは、いずれもグラスファイバーで作られたろ材を使用しており、洗浄や再利用はできません。使用環境にもよりますが、短くて1~2年、長くても4~5年でフィルターが目詰まりし、所定の風量を処理できなくなってしまいます。差圧計の数値だけでなく、使用時間や目視確認なども参考に、適切な交換時期を判断しましょう。それぞれの性能と特性を理解し、目的に合ったフィルターを選択することが重要です。製薬工場や半導体工場など、より厳密な管理を必要とするクリーンルームでは、フィルターの目詰まり状況に関係なく、毎年交換する場合もあります。
・HEPAフィルター
HEPAフィルターは、High Efficiency Particulate Air Filterの略で、0.3μmの粒子を99.97%以上捕集する高性能フィルターです。病院の手術室や精密機器の製造工場など、高い清浄度が求められる場所で使用されています。
HEPAフィルターは、グラスファイバーで作られたろ材で構成されており、そのろ材の繊維が複雑に入り組むことで微粒子を捕集します。フィルターの厚みや密度によって性能が異なり、JIS規格で定められた性能基準を満たした製品だけがHEPAフィルターと呼ばれます。
HEPAフィルターは、定期的な交換が必要です。使用時間や環境によって異なりますが、一般的に3~5年に1回の交換が推奨されています。
・ULPAフィルター
ULPAフィルターは、Ultra Low Penetration Air Filterの略で、0.15μmの粒子を99.9995%以上捕集する超高性能フィルターです。半導体工場や医薬品製造工場など、より高い清浄度が求められる場所で使用されています。
ULPAフィルターは、HEPAフィルターよりもさらに細かい繊維で作られたろ材を使用しており、より微小な粒子を捕集することができます。HEPAフィルターと同様に、JIS規格で定められた性能基準を満たした製品だけがULPAフィルターと呼ばれます。
ULPAフィルターは、HEPAよりも細かい粒子を捕集するため、目詰まりしやすく、交換頻度も高くなります。一般的に、1年に1回~2回の交換が推奨されています。
注釈:JIS B 9927(2022)改訂版より、HEPA/ULPAにおける対象粒径がMPPS(MOSTPenetratingParticleSize)最大透過粒子径に変更になり、それぞれの捕集効率が95%~99.999995%までのISOクラスが規格化された。
■【クリーンルーム】エアフィルターの組み合わせ
クリーンルームでは、複数のエアフィルターを組み合わせることで、より高い清浄度を実現することができます。ここでは、代表的なフィルターの組み合わせとHEPAフィルター/ULPAフィルター以外のそれぞれの役割、メンテナンス方法について説明します。
・一般再生型(プレフィルター)
不織布製で、5~6回程度洗浄して再利用できます。ただし、ろ材が傷んでろ過性能が低下したら、交換が必要です。
・非再生型(プレフィルター)
ガラス繊維製で、洗浄できず使い捨てです。比較的小さな粒子を捕集するタイプも、洗浄再生できず、都度交換が必要です。
・中高性能フィルター
中高性能フィルターは、花粉や塵などの微粒子を捕集します。電気を帯びた高分子誘導体が材質に使われており、静電気の力で粒子を捕集します。水洗い洗浄できないので、使い捨てです。
・ケミカルフィルター
吸着剤を使って、酸性ガス・有機ガス・アルカリ性ガスなどの有害ガスや化学物質を除去するフィルターです。埃や塵を捕集しておらず、圧力損失値は測定できません。メンテナンス時期は、吸着剤をサンプリングして分析し、検証した推定寿命をもとに判断します。
■HEPA/ULPAフィルターの寿命を延ばすには?
HEPAフィルターの寿命を延ばすために重要な役割を果たすのが、プレフィルターです。プレフィルターは、HEPAフィルターの前に設置することで、空気中の塵埃や毛髪などの大きな粒子を捕集し、HEPAフィルターに到達する汚れの量を減らします。プレフィルターは、汚れやすい分、定期的なメンテナンスが必要となります。一般的には、1ヶ月に1~3回の清掃が推奨されています。清掃方法は、プレフィルターの種類やメーカーによって異なるため、取扱説明書を確認する必要があります。
日々の清掃で作業環境を維持することはできますが、年単位でクリーンルームを運用する場合、必ず消耗品の交換が伴います。
英和商工株式会社は、空調工事に関する診断・施工・アフターフォローまでワンストップでサポートしております。さらに、空調機には欠かせないフィルターの卸業務も手掛けています。
さまざまなサイズや大きさを取り揃えているため、ほとんどの形状に対応可能です。異なるメーカーであってもサイズに合わせて対応できますので、メーカーを問わずお気軽にご相談ください。