皆さんこんにちは。大阪・東京・中四国に拠点を置き全国のメンテナンスや空調設備の工事を請け負っている英和商工株式会社です。
研究施設や実験室など、特殊な物質を取り扱う施設では、有害なガスが発生する場合があります。このガスを適切に処理し、環境を守るための装置を排ガス処理装置と言います。排ガス処理装置には定期的なメンテナンスが重要ですが、装置の機能を発揮させるためにはメンテナンスの重要性を理解しておくことが求められます。
この記事では、排ガス処理装置のメンテナンスについて、重要性や実施方法・依頼先などをご紹介します。
■排ガス処理装置とは
排ガス処理装置とは、研究施設や実験室などの実験装置から排出されるガスを処理して安全に排出し、周囲の環境を守るための装置であり、スクラバーと呼ばれることもあります。このガスには、毒性や可燃性・自燃性などの特性を持つものも多く、使用後適切に処理をせず破棄することはできません。
排ガス処理装置を利用する目的として、ガスを無毒化するほかにも、可燃性ガスの安全な処理や、臭いを持つガスの無臭化などが挙げられます。施設周辺に対する安全対策以外に、大気汚染の防止や環境保護などの観点からも、排ガス処理装置の需要が高まっています。
排ガス処理装置は、水や薬液を使って処理する湿式と、活性炭にガスを吸着させて処理する乾式の2種類があり、処理する排ガスによって使い分けます。装置の性能を保つためには、定期的なメンテナンスが必要です。
■排ガス処理装置とメンテナンスの重要性とは?
排ガス処理装置を使用しているうちに、装置の内部や部品などに汚れが付着し、装置の性能が低下してきます。メンテナンスを怠りそのまま使用していると、装置内で有害物質が処理できなくなり、大気中に排出されるおそれや実験装置の性能があります。
適切なメンテナンスを行っていれば、故障する前に不具合を見つけられる可能性があります。しかし、メンテナンスを行わないと排ガス処理装置の寿命が短くなり、不具合に気付かないまま故障する可能性があります。さらに、故障してからメンテナンスに取り掛かると、修理や交換などにかかるメンテナンス費用も負担となってしまいます。
局所排気装置・除塵装置・プッシュプル型換気装置については、1年以内ごとに1回の自主検査が義務付けられています。それ以外の装置に関しても、1年に1回のメンテナンスが推奨されており、適正な性能を保つために定期的な点検やメンテナンスが重要です。
湿式の装置は、メンテナンスにおいて洗浄液の交換と装置の清掃を行います。これは、洗浄液の中に、バイオフィルムと呼ばれる菌類の塊が発生しないようにするためです。バイオフィルムが内部のフィルタに詰まると、ポンプの故障や洗浄力の低下を引き起こすほか、悪臭の原因にもなるため、メンテナンスによって内部環境の悪化を防ぎます。
乾式装置では、活性炭を定期的に交換します。活性炭は、寿命を迎えると有害ガスを除去できなくなり、場合によっては有害ガスが濃縮されるケースもあるのです。活性炭の内部にカビが発生しても、カビ胞子が放出されてしまうため、これらを防ぐためには定期的なメンテナンスが必要です。
〇定期的にメンテナンスを行うメリットとは
排ガス処理装置を定期的にメンテナンスすることにより、早い時点で不具合を発見できます。従来のメンテナンスは、故障した部分を補修する作業に重点が置かれていましたが、故障する前に見つける作業もとても重要です。不具合が早く見つかれば、補修にかかる時間を短縮でき、費用も抑えられます。
また、メンテナンスの結果から、消耗部品の適切な交換時期が推測できるようになり、設備の使用年数を長くすることが可能です。同時に、設備の機能維持にも役立ちます。
■排ガス処理装置のメンテナンスの工程
排ガス処理装置の構造は、湿式と乾式で異なるため、メンテナンスにおける工程も構造に合わせて行う必要があります。ここからは、メンテナンスの工程をご紹介します。
〇湿式排ガス処理装置
湿式排ガス処理装置でのメンテナンスでは、外観検査や各種高圧洗浄などを行います。具体的な流れは、以下のとおりです。
・洗浄前
洗浄前の湿式装置には、スライム状になった汚泥やスケールが内部に蓄積しています。蓄積した汚れは、風速の低下や排ガスの屋外排気の原因となってしまうため、できるだけ早くメンテナンスを施すことが必要です。
・洗浄中
汚泥やスケールが付着した循環タンク・充填材・パーツなどを洗浄すると、排ガスの処理性能が回復します。
・洗浄後
分解洗浄の完了後、パーツなどを元通りに組み付け、洗浄前と同じように作動するか試運転をして確認します。この時、水漏れなどの不具合がないか専門の作業員がチェックし、必要であれば再度組み付けを行います。
・pH計の校正
循環タンク内のpHは、排ガスの処理能力に大きく影響します。洗浄後にpH計が正しく数値を検知できるよう、校正が必要です。校正により、タンク内のpHが適正に維持されます。
・電気検査
目に見えない不具合を見つけるために、循環ポンプ内の運転電流値や絶縁抵抗値を測定します。特に、循環タンク内にある凍結防止ヒーターは、常に水に触れているため絶縁不良が発生しやすく、細部にわたる検査が必要です。
〇乾式排ガス処理装置
乾式排ガス処理装置では、ユニットの外環検査やユニット内の清掃・活性炭やプレフィルタの交換などを行います。具体的なメンテナンス工程をご紹介します。
・劣化活性炭抜き取り
装置内にある劣化活性炭には溶剤などが付着しており、抜き取る際に活性炭に付着した粉塵が周辺に舞ってしまいます。保護具を着用して屋外で抜き取り作業をすることで、粉塵が人体に入り込むのを防ぎます。
・ユニット内清掃
劣化活性炭を抜き取った後に、ユニット内を清掃すると共に、ユニット内に損傷等が発生していないかを確認します。
・活性炭充填
新しい活性炭を充填することで、吸着能力が復活し、大気汚染や臭いなどへの対策ができます。活性炭が排ガス処理の役割をしっかりと果たすためには、定期的な交換が欠かせません。
・プレフィルタ交換
プレフィルタは、活性炭の手前に設置される部品です。活性炭フィルタが詰まらないよう、空気中のゴミやホコリを捕集する役割を持ち、プレフィルタが目詰まりすると風力低下を招きます。このため、活性炭と同様に定期的な交換が必要です。
・活性炭性能劣化分析(オプション)
オプションとして、活性炭の残吸着力などを分析し、結果や交換推奨頻度などのご提案も可能です。お気軽にお申し付けください。
〇排風機
排風機(排気ファン)は、外環検査や動作確認、Vベルト交換などが主な点検項目です。メンテナンス工程の流れは以下のとおりです。
・外観検査
排風機は常に振動しており、わずかな損傷や緩みが故障につながります。外観から分かる亀裂・腐食・ボルトナットの緩みなどを見つけます。
・Vベルト交換
ベルト駆動式の排風機は、Vベルトの断裂・伸び・摩耗などによって正常な作動ができなくなります。排気風量の低下や停止などを防ぐため、定期的にベルトを交換します。
・動作確認
ベルトの交換後、排風機を稼働させて音や振動などを確認します。音や振動に異常があれば、修理がおすすめです。
・運転電流値測定・絶縁抵抗値測定
目に見えない不具合を発見するために、排風機の運転電流値や絶縁抵抗値の測定も重要です。特に、排風機の心臓部分であるモーターは、詳細な点検によって正常に稼働するかの確認が必要です。
排ガス処理装置のメンテナンスは、ガスを安全に無害化するとともに、装置の寿命を延ばし、適切な性能を維持するために欠かせないものです。メンテナンスが不十分な場合、ガスの安全な処理ができなくなるおそれがあります。
排ガス処理装置のメンテナンスは、専門的な知識や技術が必要なため、自社で行うのは困難です。メンテナンスのご依頼やご相談がございましたら、英和商工までお問い合わせください。
当社では、排ガス処理装置のメンテナンスを専門的に行っています。経験豊富な技術スタッフが迅速かつ丁寧に対応し、排ガス処理装置の性能を最大限に引き出します。メンテナンスのご依頼は、大阪・東京・中四国の全拠点で対応可能でございます。排ガス処理装置のメンテナンスでお悩みの方は、ぜひ当社にご相談ください。