食品工場のHACCP義務化の対応でクリーンルームの導入が進んでる?クリーンルーム導入のメリットを解説  

皆さんこんにちは。大阪・東京・中四国に拠点を置き全国の空調設備のメンテナンス及び工事を請け負っている英和商工株式会社です。

食品事業者に対するHACCPの導入が義務付けられてから数年が経過しました、食品工場ではそれに伴い、クリーンルームの設置が注目を集めています。クリーンルームは、食品の安全性を確保し、食品の品質を保つための大きな役割を担うことができます。設置には大きなコストが発生しますが、それを上回るメリットを受けることが可能と言われています。より安全で信頼性の高い食品の提供を可能とするクリーンルームのメリットについて紹介します。




■そもそもHACCPとは?簡潔におさらい



HACCP(ハサップ)とは、Hazard Analysis and Critical Control Pointsの頭文字をとった略称です。国連の国際食品規格委員会から発表された国際的に認められた衛生管理の基準であり、食品の安全性を確保することを目的としています。

HACCPでは、食品の製造・加工・流通の全工程において、食中毒菌や異物などの危険要因を分析し、それらを除去または低減させるために重要な管理点を特定します。そして、それらを監視・記録・検証することで、問題のある製品の出荷を防ぎます。日本では、2021年6月から食品事業者にHACCPによる衛生管理が義務付けられました。


参照:厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化について



■HACCPとクリーンルーム



HACCPでは食品の安全を守るためには、危害の発生を予防することが重要されています。この考え方に基づいた衛生管理を行う上でクリーンルームの導入は望ましい環境を実現します。設置が義務付けられているわけではありませんが、微生物や異物の混入を防ぐことのできるクリーンルームは、食品の安全性を高めることができます。



・クリーンルームとは?

クリーンルームは、日本の工業規格であるJIS Z 8122において、『コンタミネーションコントロール(*1)が行われている限られた空間であって,空気中における浮遊微小粒子,浮遊微生物が限定された清浄度レベル以下に管理され,また,その空間に供給される材料,薬品,水などについても要求される浄度が保持され,必要に応じて温度,湿度,圧力などの環境条件についても管理が行われている空間』と定義されています。

わかりやすく言い換えると、「作業空間内の空気中に含まれるホコリやゴミ、微生物や細菌などを限定した数以下に抑え、清浄度(クラス)の管理を徹底した部屋」という意味なので、目に見えないサイズの小さなほこりや不純物が製品に付着するのを防止する役割があります。室内の圧力の調整や換気方式によってクリーンルーム内の環境は保たれています。


(*1) コンタミネーションコントローとは


・HACCPとクリーンルームの管理対象の違いは?

クリーンルームの設置は、HACCPによる衛生管理のうち環境の安全確保を担います。



◆HACCPの管理対象

HACCPは食品製造全般、つまり製造・加工・流通の全工程を対象としています。具体的には、原材料の受け入れから最終製品の出荷までのすべての段階で、異物混入などの危害の発生を予防し食の安全を確保します。



◆クリーンルームの管理対象

クリーンルームは製造工程における「環境」を対象としています。具体的には、温度、湿度、清浄度などの環境を厳密に管理された空間を用いて、微生物や異物の混入を防いでいます。




■食品事業者がクリーンルームを導入するメリット


食品工場の事業者にとって、食品の安全性を確保するために重要な投資となり得ることができます。そこで、クリーンルームを導入した場合に得られるメリットについて紹介します。



・食品の安全性や品質の向上

クリーンルームでは、微粒子や微生物の混入を防げるため、製造時に食品に異物が混入するリスクを大幅に減らすことができます。



・作業効率がアップする

作業工程の切替時や作業場所の移動時は、最も汚染のリスクが高まります。しかし、クリーンルームの設置によって、一般空調ゾーンとの区画がはっきり分けられるので、作業員や材料の移動に伴う交差汚染を防ぐことができるため、作業効率がアップします。



・醸造や発酵に用いる微生物もコントロール可能

バイオロジカルクリーンルームであれば、微生物の排除や交差汚染防止に効果を発揮するため、醸造や発酵の妨げになる菌の混入や汚染のリスクを減らし、スムーズな醸造や発酵を促すことができます。



・信頼性や競争力を高められる

クリーンルームを導入すると、製品の品質と安全性が確保されるので、食品の安全性や品質に対する消費者のニーズに応えられます。また、クリーンルームで製造された食品であるというだけで、品質管理に対する高い安心感を与えられるので、企業の信頼性を高められます。また、新規取引先を開拓する際にも異物混入対策に力を入れていることをアピールすることができます。



・風評被害などのリスクを未然に避けられる

食品の細菌汚染や虫などの混入を一度起こしてしまうと、健康被害を引き起こす危険性があります。こういったトラブルは、出荷済の商品の回収や返品に関するコストが発生するほか、生産ラインを停止する必要が出たり、その後の風評被害が続いてしまったりなど、その後の業績に大きな影響を及ぼしてしまいます。クリーンルームでは衛生管理を徹底できるので、そのようなリスクを未然に防止することができます。



・統一された清浄度のレベルが安心への裏付けとなる

クリーンルームはISO14644-1に基づいて設計され、清浄度によって求められるレベルが異なります。この規格はISOで9段階に分けられており、空気中の粒子数を規定し、微粒子の除去効率を評価して定められます。どのクラスのクリーンルームであるかによって、清浄度を客観的に示すことができます。




■クリーンルームを依頼する業者選びのポイントは?



クリーンルームの設置においては、施工実績が豊富で、それぞれの現場に応じた的確な提案ができる業者の選定が重要です。下記のようなポイントについて、慎重な比較や相談を通じて、的確なアドバイスや提案の受けられる業者を選ぶことが成功の鍵となります。



・使用用途を明確にすること

クリーンルームの設置目的や用途を明確にしましょう。扱う食品の種類や製造工程によって必要な清浄度が異なります。



・ゾーニングの見直し

クリーンルーム設置の際は、生産ライン全体のゾーニングを見直して最適化しましょう。モノやヒトの動線や台車の置き場所など、周囲の作業環境を生産フローと照らし合わせてクリーンルームの設置場所を検討しましょう。



・天井高や天井裏スペースを確認する

天井裏のスペースがない場合は、空調機器や配管を露出で施工したり、天井高の低い空間をクリーンルームにする場合、できる限り天井高を圧迫しないように配慮したりといった施工も可能です。また、クリーンルーム内に配置する機器や設備の搬入や取り付けにも支障のない適切な高さを確保できるかを確認した上で、施工方法を決定する必要があります。



・スペースの工夫

設置予定のスペースによっては凹凸のある形状、多角形型にするといった工夫や天井や内壁にリフォーム工事の必要が出てくるケースも想定されます。それぞれの現場スペースの特性と効率の良い業務を両立させる設計の提案が必要です。




■まとめ

HACCPとクリーンルームの概要やクリーンルーム導入のメリットについて紹介しました。食品業界において、食の安全への取り組みは今後も重要性を増していくことが予想されます。その中で、HACCPの取り組みの一つとしてクリーンルームを導入することは、食品工場にとって顧客や取引先へ安全性と信頼性を伝えるための効果的な手段です。正確な管理と適切な設備の導入により、顧客のニーズに応えつつ、食品工場自体の競争力も向上させることができます。


英和商工では、クリーンルームの設置工事や空調設備に関わる保守点検、バリデーション業務を手掛けております。お客様が安心してご使用いただけるよう、用途やご要望に合った最適なクリーン環境をご提案させていただきます。クリーンルームの設置を検討される場合や、食品工場のゾーニングや汚染防止施策について改善をお考えの企業ご担当者様は、まずはご相談ください。