皆さん、こんにちは。大阪・東京・中四国を拠点に、空調メンテナンスやフィルター販売、更新工事、クリーンルーム設備保守などを手掛けている英和商工株式会社です。
精密機械の工場や病院の手術室といった場所では、品質管理や安全管理の都合上、極めて清浄な空気環境を保つ必要があります。一般的な換気設備では、こういった施設で求められるだけの空気環境を作り出すことはできません。
そこで用いられるのが、弊社が施工を手掛けている「クリーンルーム(cleanroom)」です。ここではクリーンルームの種類や、業種別のクリーンルームの役割・必要性について解説します。
■クリーンルームとは?
クリーンルームとは防塵室(ぼうじんしつ)とも呼ばれる、一定の基準を満たす清浄な空気環境が確保された部屋のことです。JISにおいては、「空気中における浮遊微小粒子、浮遊微生物が限定された清浄度レベル以下に管理され、その空間に供給される材料、薬品、水やその他についても不純物、ゴミを取り除いてゴミを持ち込まないようにしようとする空間」であると定義されています。
クリーンルームの用途は、精密機器の工場や食品工場、病院などさまざまです。分野ごとに要求される仕様も異なりますが、どの用途でも徹底して空気を清浄に保たなければなりません。そのためクリーンルームでは、ゴミなどの異物を「持ち込まない」「発生させない」「堆積させない」「排除する」の4原則を守る必要があります。
まず、異物やその発生源が持ち込まれるのを防ぐために、クリーンルームに入れる機器や材料などはすべて洗浄します。もちろん人間も例外ではなく、出入りの際にはエアシャワーを浴び、わずかなゴミや細菌も吹き飛ばさなければなりません。
また、異物の堆積を防ぐためには掃除が必要ですが、それ以前に室内の凹凸を極力減らし、ゴミやホコリが溜まりにくくしています。微小な粉塵が発生する箇所の付近には排気設備が設置され、派生した粉塵は速やかに排出されます。ゴミやホコリが静電気によって吸着するのを防ぐための除電設備や、室内の気流を妨げない構造も大きな特徴です。
そして、クリーンルームは気密性が高く維持されており、天井のファンフィルターユニットを通った清浄な空気が供給されています。床面付近には排気経路が設けられ、浮遊物を含む空気を外部に排出できるようになっています。また、この構造により、クリーンルーム内部は外部よりも気圧が高い「陽圧」の状態になっているため、外部からの空気の侵入を防げるのです。
ちなみに、クリーンルームと用途や性質が近い設備としては、感染症の治療や放射性物質の取り扱いの際に使われる「陰圧室」があります。陰圧室は文字通り、室内の気圧を低く保ち、室内にあるものが室外に出ないようにするための設備です。清浄な空気を循環させるという点は共通していますが、クリーンルームは異物の持ち込みを防ぐ「陽圧室」であり、真逆の性質を持っています。
■クリーンルームの種類
クリーンルームは、用途や気流の方式によっていくつかの種類に分けられます。主な種類を確認しておきましょう。
◯用途による分類
クリーンルームには、大きく分けて以下の2つの用途があります。
・インダストリアルクリーンルーム(ICR)
インダストリアルクリーンルーム(ICR)は、工業用のクリーンルームです。空気中に浮遊する微小な粒子の管理を目的としており、高性能フィルターによって除塵が行われ、空気中の微粒子の数を一定レベル以下に抑えています。主に半導体や精密機械などの製造工程で使用されます。
・バイオロジカルクリーンルーム(BCR)
バイオロジカルクリーンルーム(BCR)は、食品・医薬品用のクリーンルームです。浮遊微粒子の濃度を低く保つのはもちろん、空気中を浮遊する菌や床に落下して堆積する菌などの数値を一定値以下に抑える、微生物学的な空気清浄度も要求されます。主に製薬・食品工場や医療、バイオテクノロジー研究などの分野において、汚染防止のために利用されます。
◯気流の方式による分類
グリーンルームは、清浄な空気環境を保つために気流(空気の流れ)を生み出しており、その方式によって以下の2種類に大別されます。
・一方向流方式
一方向流方式は、天井のファンフィルターユニットから送られた清浄な空気が、クリーンルーム内を一定速度かつ一定方向に流れる方式です。通常は天井から床に向かって空気が流れるように設計されており、この一定方向の気流によって、室内の微粒子や微生物などの拡散を最小限に抑えることが最小限に抑えることができます。
メリットは、非常に高い清浄度を維持できることです。また、特定のエリアだけを特に清浄な状態に保つこともできます。その反面、エネルギー消費が高いというデメリットがあります。
・非一方向流方式(乱流方式)
非一方向流方式は、ファンフィルターユニットから送られた清浄な空気が、室内に不規則な空気の流れ(乱流状態)を作り出す方式です。清浄な空気と室内の空気を混合・希釈し、グリーンルーム内の微粒子や微生物などを均等に拡散させることで、全体的に均一な清浄度を維持します。
メリットは、作業領域の位置や形状の制約が少なく、柔軟な配置ができることです。また、一方向流方式に比べてエネルギー消費も抑えることもできます。その代わり、清浄度は一方向流方式ほど高くなく、超清浄空間が求められる場所(精密機器工場など)では使われません。
■【業種別】クリーンルームの役割と必要性
クリーンルームは、業態や扱う製品によって、その役割や必要性が異なります。そこで、主な業種別にクリーンルームの役割と必要性を見ていきましょう。
◯半導体・精密機器製造工場
精密機器の製造工場では、不良品の発生を防ぐために清浄空間を作る必要があります。特に重要なのが半導体の製造工場です。
半導体の製造工程には、1μm(マイクロメートル)よりさらに小さな寸法の回路を作る工程もあります。これほどの超微細加工が求められる分野では、目に見えない微粒子1つが付着するだけでも、不良品の発生につながってしまいます。
不良品の発生を防ぐためにも、半導体の製造工場は徹底的にクリーンな空間でなければなりません。そのため、クラス1~100という最高の清浄度が求められ(数値が小さいほど清浄)、クリーンルームもそれに対応できる性能のものを設置する必要があります。
◯特殊手術室や無菌室、新生児室等
病院の手術室や治療室では、感染症の空気感染や薬剤の汚染などを防ぐため、清浄な空気環境を維持する必要があります。微粒子はもちろん、微生物が極力存在しない空気環境を保たなければなりません。
また、薬品の製造工場においても、同じく汚染や異物混入を防ぐための対策が求められます。人々の健康を守るためにも、クリーンルームによる空気環境の管理は必要不可欠なのです。
◯食品加工工場
食品の加工・製造工程においても、クリーンな空気環境の維持は重要です。食品は人の口に入るものですから、安全のためにも異物混入は絶対に阻止しなければなりません。
微生物や微粒子による汚染はもちろんのこと、毛髪や虫、金属片にガラス片などが混入する可能性もあり、徹底した対策が求められます。一度の異物混入が大きなイメージダウンや業績悪化につながりかねないため、クリーンルームによって空気環境を徹底管理しなければならないのです。
◯物流センター
近年増えているケースとしては、物流センターにおけるクリーンルームの活用が挙げられます。物流センターでは荷主の荷物を保管する他、流通加工や包装の役割を担うこともあります。この際、クリーンルームがあれば、食品・化粧品・衛生用品(マスクなど)の取り扱いも可能になるのです。
このようにクリーンルームは、特定の施設においては必要不可欠な設備です。もしクリーンルームに不備があれば重大なトラブルにつながりますから、基準に沿って設置工事を行うのはもちろん、定期的に保守点検を行う必要があります。適切な空気環境を維持するためにも、クリーンルームの施工は実績豊富な専門業者に依頼しましょう。
英和商工では、クリーンルームや空調設備の設置工事、保守点検、バリデーション業務を手掛けております。経験豊富な専門技術者が工事を担当し、お客様が安心してご使用いただけるよう、用途やご要望に合った最適なクリーン環境をご提案させていただきます。クリーンルームの設置や保守点検(性能の維持管理)をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。